2023年を迎えて(ブログ その182)
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作成日 2023年1月07日(土曜)22:22
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作者: 坂東昌子
コロナの猛威、戦争の長期化、さまざまな問題を抱えながら新年をむかえました。
どうもおめでたいとは限らない事件がたくさん発生するので、「あけましておめでとう」というのは気が引けるなあと思っていたら、素敵な言葉があったのでちょっと変形してみました。
May your new year be filled with the wonderful discovery
人というのは、どんな困難な問題に直面しても、その中で解決の方向へと舵を切り、知恵を出し合って、前進する創意的な挑戦をする方途を見出してきたと思います。そんな思いを込めて書いてみました。
このお正月は、残っている仕事を片付けたり、それに関連する新しい勉強をやり直したり、いろいろな妄想を描いたりで、今日は、やっと一息ついたところです。年始にしっかりエネルギーをためたエネルギーで、新しい発見を求めて今年も頑張りたいです。
振り返ると、あいんしゅたいんが発足したのは2011年。ちょうど東北大震災、そして福島原発事故が起こった年でした。もう12年もたってしまいました。今にもつぶれるかなという思いの中で、たくさんの方々に助けられてここまでやってきました。
ちょうど定年退官した年、TEPCO事故を契機に、素粒子論の研究から放射線の生体影響と研究テーマを転換して、学会の新参者として新しい研究の世界に飛び込んでいきました。
物理学会や応用数理学会など、学会といっても似た湯な学会の中で活動してきて、新しい学会に飛び込んで、もいろいろ異なる習慣があるのだと痛感しました。湯川研究室、そして素粒子論グループという、対等平等で何でも言える、いわば、「心理的安全性」の高い中で、誰に対しても率直にものを言え、若いものも古いものも一緒になって真理を追究するという環境に恵まれてきた世界から新しい経験をしてきたのでした。
でも、これまで培ってきた女性研究者のネットワーク、若手と取り組んだポスドク問題、そして地域の皆さんと取り組んだ保育所作りのつながり、愛知大学で学生たちと取り組んだ環境問題、そんな私の生き方と連動した沢山のつながりがありました。そんな方々に支えられて、何とか、これまで続けて来られたのです。
特に最近、痛感するのは、親子理科実験教室の取り組みの中で、子供の好奇心を大切にすることから、その発展形として、周りの親たちの科学への好奇心の高まりをまじかにみることができました。そうだ!
Science for all in a family
という方向へとつなげていくべきではないかと思い始めています。ネット上で多くの科学的知見が検索できる今、誰もが自分の好奇心に従って検索していける時代、もう、科学は科学者だけの独占物ではない、一緒に考え、一緒に見つけて行く探究活動、大人も子供も一緒になって、ほんとのものを見つけていき、、新しいアイデアを交換し合える場が今必要だな、と思うようになりました。
また新しく研究テーマとなった、生物科学の分野でも、私のように新参者でも、いろいろな疑問をぶっつければ、答えてくださる多くのすぐれた専門家を知るという幸運に恵まれました。
放射線生物学というのは、単に放射線防護や医療への効用という目的のための応用科学だと思っていた私にとって、その歴史をたどっていくと、実は放射線というプローベを使って、生命の起源に迫る優れて興味ある分野である事、その思いは、すでに、かのコペンハーゲンを中心に、ボーア・シュレディンガー・デルブリュックたちのグループの生き物の本質に迫る熱い思いが、根源にあったともわかってきました。
それは、コペンハーゲンだけではなく、日本の湯川博士たちにも、同じように存在していることを知ったのも、実に新鮮でした。実際に湯川は、シュレディンガーの「生命とは何か」という英語版が出版されたとき、ちょうど在米中で、湯川は即座に2冊買って、その1冊を日本に送り届けたという話も、最近知りました(湯川資料室の小沼さんをはじめ皆さんに感謝です!)。それの日本語訳が出て、当時の若者(私もそうでした!)たちは、みんな夢中になって読んでいたのでした。そして素粒子論から生物学へと専門を変えて先輩も結構いました。
新しい学問の興隆がこうして生まれたのでした。でも、私は、昔この本を読んで、「へえ、ネゲントロピー?なにそれ?」という好奇心だけは覚えていますが、「生きるとは何か」といった本質的な問いにまではその本から読み取れなかったのです。
昨年、圧迫骨折で入院生活を3週間も続け、その時改めて昔買ったシュレディンガーの文庫本を読み直し、そのことを発見しました。そうだったのか、と今頃感銘を受けた次第です。今更ながら、やっぱり湯川先生はすごい人です。
湯川邸が京都大学の所有になり、その活用をめぐって、京都大学の串田担当理事との話し合いの時、私達の話を聞いて、理事が、「私は当時文学部だったのでそれほど湯川先生とのことは知りませんでしたが、湯川先生は、21世紀に生きる分野横断型の、未来を見据えた科学者だったのですね」と言われたことが忘れられません。
その湯川博士が残して下さった、私たちへの贈り物をもっと深く掘り下げたいと始めたのが「湯川博士の贈り物」シリーズです。
● on-line cafe “湯川博士の贈り物”
● on-line cafe “続・湯川博士の贈り物”
● on-line cafe “湯川博士の贈り物 3”
この1月14日には、新しくこの企画に加わってくださった基礎物理学研究所のお計らいで、基礎物理学研究所のパナソニックホールで、若い新進気鋭の宇宙物理学者たちが講演してくださいます。
「贈り物シリーズ」では初めての対面の開催でもあり、基礎物理学研究所という湯川博士の思いが詰まった研究所での催しとなります。研究所のご厚意で、参加費なしで開催することになっています。
こうして、湯川邸のオープンの日まで、湯川博士の残された思いや未来に向けての情報を発信し続けていきます。皆様、どうか関心を持って頂き、人類に未来を展望して、ご一緒に語らう場にお越しください。子供たちも「宇宙はどうしてできたの?」「宇宙の橋はどうなっているの?」とか「どうして宇宙は広がり続けているの?」とかいろいろ疑問をぶっつけています。そんな子供たちお含めて、ぜひお越しください。
詳細は、基研HPならびに当HP、お申し込みは申込フォームよりお願いします。
昨年は秋に転倒圧迫骨折して、入院生活を3週間ほどして、今もコルセットをはめての生活ですが、同も年を取ると骨が弱くなって直りが遅いようです。この間、新しい経験をして、医療の在り方についても考えることが多くありました。また、皆様にいろいろとご心配をかけました。ありがとうございました。
今年も、おたがいに力を寄せ合って前進しましょう。