2021年のご挨拶 ~ 天羽さんのこと(ブログ その153)
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作成日 2021年2月02日(火曜)09:21
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作者: 坂東昌子
この1年を振り返ってみると、コロナに振り回された1年ともいえますが、逆に、次の時代を考えるいい機会にしたいものです。
印象に残ることはたくさんありますが、それはあまりにたくさんなので、バタバタと日々を過ごしているうちに1月も半ばを過ぎてしまいました。おいおい少しずつ中身を書いていくつもりで、今年は週に1回ぐらいの割合でブログを短くして書いていこうと思っています。「坂東さんのブログは長すぎる」とよく言われるので・・・。
で、最初は最近の出来事から・・・
1月24日、天羽悠月さんからメールが来ました。彼女はずっと親子理科実験教室で楽しみながら神戸から通い続けてきたとても活発な小学生でしたが、昨年4月高校に入学し、とても張り切っておられました。コロナにも負けず、すます元気です。
坂東先生
もうすぐ2月ですね、もうひと月が終わることがにわかには信じられません。今週は少し寒さが和らいで、気分も軽い一週間になりそうです。
今日学校の図書館でブルーバックスの棚を見ているときに、見覚えのある名前だと思い、「理系の女の生き方ガイド」を拝読しました。科学の世界の厳しさを教えてくれ、研究者になるなら今からその姿勢を作らなければいけない、イカンイカン!と気合が入りました。 坂東先生と宇野先生節で元気がたくさんもらえました!個人的に宇野先生の衣装がいつも赤い理由がわかり嬉しかったです。
とにかくもっとぐいぐいいかなければ生き残れないことが分かったので、読み終わってから背筋がシャンと伸びました。頑張ります。
天羽悠月
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「そうだ、今年は人類の半分を占める女性の科学という社会での歩んできた歴史だけでなく、この社会で女性たちの現状を話し合い、次のポストコロナ時代へ向かって歩みを進めていく話し合いの場を」とおしゃべり会から始めて、輪を広げていきたくなりました。
彼女は、この前のブログで紹介した「学術会議イン京都」の発表で、出席者に大変な感銘を与えた写真の(当時)女子中学生です。その時の発表した原稿をいただいたので、ご本人の了解を得てここに紹介します。
一生懸命考えて準備して、短い時間を有効に使って素晴らしい発表をしてくれました(大人の発表よりうまかったなあ・・・???ってみんな言ってました!)。
日本学術会議in 京都 第二部 分科会 京都市民にとっての科学・学術 子供たちと一緒に科学する 市民と科学 TEAM ゆりかもめの試み
神戸市立平野中学校 二年 天羽 悠月
皆さん、こんにちは。
今回このような場に立たせて頂き、ありがとうございます。私がお世話になっているNPO 法人知的人材ネットワークあいんしゅたいんによる ”親子理科実験教室” と、中高生たちによる自然放射線マッピングプロジェクト ”TEAM ゆりかもめ”のお話をさせて頂きます。
私が初めてあいんしゅたいんに参加したのは、小学3 年生の時でした。 ”親子理科実験教室” では、答えを導き出す過程を大切にし、 どのような意見でも否定せず受け入れ、より深く考え歩めるように指導してくれました。工夫された二時間の講義はあっという間に過ぎ、 私は終了後いつも 先生・理科実験教室でアシスタント・ティーチャーをされている大学生・大 学院生の皆さんに質問をしたり、 日常の疑問や発見をお話していました。 どの方も私の話に耳を傾け、いろんな方向からの考え方やアイデア、また次回への提案など、子供扱いせず接して下さいました。そのことが小学生だった私の自信へとつながり、”知識を得たり、挑戦したりすることか ら視野を広げることができる” と 気づかせてくれました。
小学六年生の時、私は放射線を測定し、地図化する活動 ”TEAM ゆりかもめ” に参加し始めました。 それまでも、”親子理科実験教室” で自然放射線の存在を、YY 式ガイガーカウンターや霧箱を作製することで、音や目で 確かめる実験を行ってきました。ガイガーカウンターを ”TEAM ゆり かもめ” からお借りした帰り道のこと。 早速測定を始めると、刻々と 数値が変動していき、私は放射線量は”必ずしも一定ではない”と知りました。日々計測を重ねてみると 、登山での山頂付近や飛行機の離着陸時、百貨店の玄関・きれいなビルの周辺で数値が上昇し、それはなぜなのかを考 え、勉強し、現在も計測活動を行っています。
二〇一八年。今年の春。福島・東京・京都・神戸の中高校生が集い、放射線について話し合うセッションに参加させて頂きました。
はじめに、”放射線について学ぶ以前は、放射線の何が恐かったか。”と、自分たちの意見を出し合いました。共通していたのは、”自分たちはまだ幼く、何も分からなかったが、ただメディアや大人たちが大混乱している姿でより一層恐かった”と、一同に話す中、福島の高校生は、”『親に外に 出るな。』と言われたり、 ニュースで原発が爆発する映像が何度も流されたことで、 『福島にしかないものだ』 と印象を持った。” ”自分の町が安全だと言われても恐い。” と吐露され、同時に”広島・長崎のように震災を風化させないためには、どうしたらいいか。” と問題を提起されました。
その問いに対し、私たちは”学校で学んだが、ほとんど覚えていない。” ”福島の問題は科学的・社会的・感情的な側面が入り混じっているから難しい。” ”原爆は戦争的悲惨さがあるが、原発事故は日本国内の不祥事という意識がある。” などの意見が述べられていく一方、東京の高校生か ら、”何を風化させたくないのか。 震災ということなのか。放射線問題なのか。 事故を風化させたくないのであれば安全設計を見直して 対策した方が効果的ではないのか。” という意見が述べられました。
すると、福島の高校生から”私たちは仮設住宅の人々へボランティアを行っており、東日本大震災で傷ついた方をたくさん見てきた。そのうえ、原発によって故郷も風評被害に合っている。福島県民は普通の人でしかなく、そこに責任だけが残っていくのは納得できない。” と静かな言葉に込め られる彼女の強い思いが私の耳に残りました。
それから二か月後。私は学校で福井県を訪れ、施設や道路などが、きれいに整備されているのを目にしました。やがて、 バスが美浜町に入り、美しい水晶浜の海岸と松林の向こう側に、ハッキリと原子力発電所が見えたとき、私は悲しさを感じました。 福井の原子力発電は、発電を行っている地域で消費する以外、残りは関西に送電されています。私たちは電力の消費者です。福島の事故のように事故がおこる可能性もゼロではありません。だから、自分がその立場になった時どう思うか、必要な知識は学んでいかなければなりません。
私たちから皆さんにお願いがあります。 東日本大震災のように、 私たちが学んでいくのに、様々な分野からの知識が必要になります。学校や県といった枠組みを越えて、全国で共に考え・学び合える場があれば、 私たち中高生の意識も向上していくと思うのです。ゆりかもめでご指導くださる角山先生から”これらの問題は他人 事ではない。 あと数年もすれば、君たちが社会の中心になっていく。”とお話しいただき、 私たちは真剣に考え、セッションを重ねていっています。
私はゆりかもめで学んだことを土台に、より深く学び、多くの人との交流の元、これからの社会の役に立っていきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
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以下は私の天羽さんへのお返事(ちょっとメールに修正を加えましたが)で、お返事を書きながら今年の計画を練っています。
天羽さん
まあ、読んでくださったのですか。ありがとう。あの本はかなり昔に書いたのですが、いまだに少しは売れているみたいですね。
まだまだ言い切れなかったことはたくさんあります。特に、大学でもすべて素晴らしい先生ばかりでなく、例外かも知れないけど「居眠り教授」といわれる先生もいないわけではありません。 そのことも、当時原稿に書いたら、編集者に「こういう暗い話は相手が若い人たちなので、この本ではなしにしましょう」と言われました。
どんな組織にも、たまにおかしな人もいるので、それだけ取り上げて「この組織はだめだ。つぶしたほうがいい」みたいなことを気楽に言う人もいますが、それは全体の一部を見た話です。しっかり全体を見るようにして、だんだんその組織をいい方向へ持っていく姿勢がないと、どの組織もつぶれてしまいます。それでは、前に進んでいけません。
学術会議も、問題があるにしても、大きく全体の方向性を見て積極面を伸ばせるかどうかが問題なのです。 このことも、勉強の1つです。科学の中での女性たちの地位も、だんだんとよくなっています。勿論まだまだのところもありますが、後に続く人たちがどんどん改善していけるといいですね。
あれから20年、今はどう変わっているかな、天羽さん自身の目でしっかり見てくださいね。またお会いできるのを楽しみに・・・。
坂東昌子
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