2024年10月13日

 

2017年度第1回定期勉強会(サロン・ド・科学の探索 2017年第4回)報告

1.概 要

日  時:2017年4月30日(日) 14:00~17:00
場  所:NPO法人あいんしゅたいん事務所
話題提供:中山昌彦氏(公益財団法人京都健康管理研究会・中央診療所 呼吸器内科)
話  題:寿命の話・・どこまで伸び続けるか?
当日資料:中山氏自己紹介と概要
参考資料:当日議事録(文責:衣川哲弘氏)

2.話題概要

中山昌彦先生は、長らく京都第一赤十字病院呼吸器科で肺癌をはじめとして、呼吸器疾患の患者治療にあたってこられました。そして今は呼吸器科のご専門を生かして定年後も医療活動を続けておられます。様々な医療の現場で、たくさんの患者を診てこられた先生は、最近は寿命の問題で論文を書かれたとのこと、いったいどこまで寿命が延びるのか、という問いに答える考察をなされたそうです。

確かに、医学の発展と衛生環境や栄養状態がよくなったことで、寿命はどんどん延びています。今日も、町内会での相談の席で105歳のお母さまがいらっしゃる方がおられ、今も音楽を聴き、新聞を丹念に読んでおられるとか、明治元年生まれだそうですが、びっくりしました。好奇心が満点で、よくお話しされるそうです。そうなるといったいどこまで元気に生きられるのか、いくらでも伸ばせるような気もします。 ところが中山医師の話では、「やっぱり限界がある」ということで、それはなんと、120歳代だそうです。女のほうが少し長いそうですが、へーって感じです。そもそも寿命は人によって決まっているのでしょうか?例えばマウスの実験では、実験室を清潔にして環境を良くしているので寿命を全うして死ぬのは、ほとんどがんが原因だそうです。そうなら、がんは生き物が、「もうそろそろですね」と教えてくれている寿命の終わりだということにもなります。人の場合はいろいろと事故にあったり、環境が悪かったりするので、別の原因で死に至りますが、それでもほとんどの病気が治るようになった今では、だんだんがんで死ぬ人が多くなっています。 「そもそも寿命はどうして決まるのか」という問いに、中山先生は、120歳代までが限度だと、どうして言えるのか、ぜひ知りたくなって、お話をお願いしました。

ちょうど、放射線の影響がどの程度か推定するにも、「人口放射線の被ばくがない場合にどの程度がんにかかり、どれくらい死亡するのかが分かっていないと、推定できません。 ? Armitage と Dollという疫学者たちが、成人がん罹患率が年齢に応じてどのように増えていくかを研究しています。がん罹患率がどう上昇するかの基本的な情報を基にして、人口放射線の影響でそれがどう変わるか調べるのです。ですから、人の寿命がどのように決まるかもきちんと知っておく必要があります。
実は、中山先生は、大手前高校時代の理科クラブでの坂東の2年後輩です。中山先生と知り合いになって、京都で避難者向けのホールボディカウンター集団検診を企画した時にも、お医者様としてご協力いただいたこともありがたく思っています。そして、当アインシュタインの「低線量放射線の影響検討委員会」でお話しいただいたこともあります。そのとき、「60歳をこしたら明日死ぬ確率は福島の放射線の影響より大きいので、今のうちにやりたいことをやるべし」 と言われたことなども楽しく思い出しています。そのときの様子は、ブログにあります。

久しぶりに去る2017年4月8日、大手前高校時代の理科クラブの集まりがあり、そこで私は「物理屋が生物の研究に乗り出して感じたこと」というようなお話をしました。そ子ではいろいろな議論が飛び交ったのですが、特に、がんの話から、放射線の影響の話、そしてしまいには「寿命はどんどん延びているがどこまで伸びるのが可能か」というような議論になったのです。そしたら中山先生が、「統計的に調べて検討したんですが、ほぼ120歳代がヒトの寿命の限界です。」とおっしゃってので、ぜひ話を聞かせてほしいとお願いしました。今回は、「サロン・ド・科学の探索」と合同の企画です。興味あるお話が聞けると思います。是非ご参加ください。

3.議事録

この日はいろいろな階層の方々が集まってくださいました全部で22名で、中学生・大学生を含めて、名古屋・神戸・大阪などから集まりました。

寿命がど個まで伸びるかというのは、とても興味深いですね。動物実験では、衛生環境を整え、安全に育てて実験するので、最後はがんで死ぬのが大勢ですが、人の場合にはいろいろな環境で生きているので、様々な事故や感染症などで死亡しますので天寿を全うする比率は低かったのですが、なんといっても、最近の発見を契機に環境が改善し、治療の対策が次第に整ったために、天寿を全うする割合が、増えてきています。とはいえ、貧しい国もあり、環境がまだ十分でないところもある ので、寿命については地域差が大きいですね。

中山さんのお話は、関心が高いのと、現在の放射線リスクとも問題が重なるところもあり、みんなよくしゃべりました。話がどんどん広がって、原発の是非やエネルギー問題、さらに、放射線の影響でリスクがどの程度出るかという方向まで、皆さんの関心がどんどん広がっていきました。エネルギー問題は別途取り上げたいと思います。ただ、この問題は科学だけでは済まないでしょう。

中山先生からは「昨日は自分の好きなことを話させていただき、鋭い質問やいろいろ反響があり楽しい時間が過ごせました。若い人からの反応を聞きたかったですが「みんな聞きたいことだらけ、またよくしゃべる人ばかり」でそうも行かなかったようです。帰り道、出席者の方と話し合ったのですが、全員が話せるように先生が司会をもっと強くされたほうがよかったかと思います。先生の人柄で、幅広い人たちが集まっておられたようです。スライド原稿は話さなかったものも含め添付します。

わいわい議論が出てきて、司会の坂東が、うまく若い人が話せるところまで持っていけなくて、申し訳なかったですが、「昨日は、本当にありがとうございました。とても楽しい有益な情報を得られた 時間が過ごせて、感謝一杯です。自由にものの言えるサロンって素敵ですね。思いをみんなが話せたのはよかったと思います」といってくださった方もおられたので、今でた話題をすこしずつ、深めていくように次からも、続けて議論をして いきたいと思います。ただ、疫学のように、論文を綿密に検討するというようなことはできませんでしたが、加齢という現象がどのように人の命とかかわってい るのかは考えさせられました。この地球上に生命が誕生し、そして、人類が誕生してから今日まで、営々と生き続けていけるのは、世代交代があるからで、人はいつか死ぬ存在でもあります。中山先生が言われるように 1回きりの人生だからこそ、しっかり生きている間に、充実した思いを残さない生き方をしたいものですね。 今日はたくさんの宿題が残った状態で終わりました。続きをまたやりましょう。

さっそく、大学4年生ので参加した衣川君が、まとめを書いてくださいました。衣川君、ありがとうございました 。

(文責:坂東昌子)

 

※ 間違いがある場合や、ご意見・ご感想がある場合には、お問い合わせ、もしくはFacebookのコメント欄にてご一報ください